山積みの書類、鳴りやまない電話、22時を回る時計。デザインの専門学校を卒業した私は、1年目にして社会という大きな壁にぶつかった。仕事を辞めてしまった私は、「手に職をつければ続けられるはずだ」とシフトチェンジ。特に玄人っぽい「手に職」が好ましいと思っていたので、思いつくかぎり、最も玄人っぽく思えた溶接技能を習得するために、新潟テクノスクール溶接科への入学を決めた。

クヨクヨと悩まない楽観的な性格が功を奏したのか、いざ溶接に触れてみると、毎日は楽しくなっていった。溶接の魅力は、何といっても「格好良い」ところ。鉄と火花に囲まれながら、目を守るための遮光面越しに作業するのは玄人そのもので、渋ささえ感じる。さらに、熟練者には内部の仕上がりまで把握できるようで、溶接外観が美しく整っていたとしても、褒められる事ばかりではない。職人という言葉がふさわしい作業だ。

新潟テクノスクールへの入学が、転機になった

新潟テクノスクールの溶接科は、半年間の訓練で「被覆アーク溶接」「半自動アーク溶接」「ティグ溶接」の3種類をメインに、溶接技能者として働くための基本的な技術を学んでいく。その他、ガス溶接や溶接ロボットの操作、製図の知識も身に付ける。講師の先生と話しをする中で、将来的には、最も難しい技能の一つとされるアルミ溶接を軸とする企業で溶接の腕を磨きたいと考えている。

これから溶接技能者を目指す人に伝えたいのは「想像よりも、怪我などの心配がないこと」だ。火を使う作業なので暑さを感じることこそあるが、安全保護具を装着すれば、火傷などの心配はない。また、男性が多い産業のため、ホームセンターなどで「グローブのSサイズ」の取り揃えが少ないことを忘れないでほしい。溶接作業には自分に合う手袋が必須なので、溶接技能者として就業できたら予備をいくつか持っておこうと思う。

「溶接科では半年間で基礎をみっちりと学べます」

最後に、私が溶接技能上達のために常備しているものを紹介したい。溶接は作業の姿勢や目線が大切で、手の動かし方一つで出来上がりが大きく変化してしまう。そこで私は、「溶接ビードを引き終わるまで瞬きをしない」ことを心がけている。当然、瞬きをしないと目が乾いてしまうので、目薬を常備しているのだ。どんな継手であろうがアーク、溶融池の大きさや形をしっかりと見て溶接することで良いビードを引くことができる。わたしはこれからどんな現場でも、作業服のポケットに目薬を入れて行くだろう。

ティグ溶接をするやまざきさん
趣味はテニスのやまざきさんさん(写真左)