「仕事に臨むうえでは困難なことがあるかもしれない。それを乗り越えてでも続けたいという意識の背景にあるのが『やりがい』だと思う」とは、ダイヘンのさのさん。高校時代、就職に当たり溶接に携わる仕事を志望していた女子高生は今、「やりがいのある仕事に就いている」と実感を込めて話す。
同社溶接機事業部研究開発部に在籍するさのさんは、サイリスタ溶接機の開発と、それに伴う溶接評価を担当する。「炭酸ガスとマグの半自動に関して、溶接してアークの状態を見る。出社してパソコンをチェックしたら、実験室に移動して溶接を始める。昼休みを挟んで、再び溶接して一日が終わる」
実験室の専用ブースで溶接に臨むさのさん(研究開発部実験室にて)
子どもの頃、父が仕事で車を修理する光景の中で、「溶接はきれい」と感じた記憶がある。埼玉県の工業高校に入学後、実習で初めて体験することになった溶接は「回数を重ねるごとに奥が深いと感じるとともに、興味をかきたてられた」
1年生の終わりごろ「溶接コンクールに出てみないか」と担当教師に勧誘されると、楽しそうだと練習に参加した。「うまくなりたいと思いながら、思うように溶接できず、イライラが募った。ところが、翌日になるとまた練習したいという思いに変わった」
2017年2月に行われた第7回埼玉県高校生溶接技術競技会(主催=埼玉県溶接協会)では、18人が参加するなか、見事優勝を果たす。「親も相応に喜んでいたが、コンクールに勧誘した先生は親以上に喜んでいた。全校集会でも表彰される機会を得て、クラスメートは笑顔で迎えてくれた」「また、競技会場で溶接機メーカー・ダイヘンの方から祝いの言葉をかけていただいたことが、とてもうれしかった」。同競技会は、後にさのさんが就職先を選択する大きなきっかけとなった。
同年4月の第8回関東甲信越高校生溶接コンクール(主催=東部地区溶接協会連絡会、日本溶接協会東部地区溶接技術検定委員会)では、参加22人中、8番目の成績で優良賞を受賞。また、女子選手4人の最上位になったことで、協賛メーカーから水玉柄の自動遮光面と溶接グローブを贈られた。
「研究開発に関するさまざまな要求に応じた溶接が常にできるようになることが目標」と抱負を語る
そこまで専念できる溶接について、さのさんは「溶接中も、溶接後のビードも姿、形がすごくきれい。また、やればやるだけうまくなるところも溶接の魅力」と話す。
周囲は研究開発部最年少のさのさんの仕事ぶりを「まじめで静かなイメージの半面、みなぎるパワーで一点に集中して打ち込む面もあり、静と動を感じる」と評し、温かく見守る。
さのさんは今後について、「まだ入社2年目と経験が浅く、これからいろいろな仕事に携わると思う。研究開発に関するさまざまな要求に応じた溶接が常にできるようになることが目標」と抱負を語る。
趣味の旅行先(温泉)にて