株式会社大島造船所 工作部

"技能優先「現場に
性別はない」"

たていしさん(1999年入社)

やまかわさん(2009年入社)

しださん(2012年入社)

1999年から女性技能職を採用

大島造船所(長崎県西海市)は、将来の人材不足を解消するためには女性の現場での活躍が不可欠と考え、1999年から毎年5人の女性技能職採用を目標に掲げ、採用活動を展開している。職場環境の改善や女性専用社宅の新設など生活環境の整備に努めた結果、2017年8月1日現在、工作部門の技能職社員897人のうち、女性は42人と約5%を占める(溶接職114人中、女性は約9%の10人)

「入社した1999年は、当社が現場の女性技能職を採用した最初の年だった。事務職には就きたくなかったので、振り返れば現場採用第1号に飛びついた印象がある。高校は商業科で、部活はバレーボール。溶接は未経験であり、ゼロからのスタートだった」(組立1課小組1係1班・たていしさん

「親戚の勤務先であり、親の勧めもあって当社を志望した。ほかの企業と比べて給料も良かった。高校のバドミントン部で味わった達成感が忘れられず、体を動かす仕事を希望していた。夏場は汗だくになるので体重を気にする必要がない」(組立1課小組2係・やまかわさん

「高校時代、重量挙げの部活で使用する器具の修理で初めて溶接を体験し、面白いと感じた。進路指導の先生から勧められ、溶接ならしてみたいと当社を志望した。溶接の仕事は入社前からイメージしていた通り楽しい」(組立2課組立1係・しださん


休日は溶接の音が聞きたくなる

たていしさんは女性で唯一、現場の班長を務める。機械関係を皮切りに班長歴は8年に及び、現在は協力工を含め約40人を束ねる。「前後の工程管理をはじめ、安全や資格などの管理も担当する。毎朝午前8時半のミーティングで全員のスケジュールを確認し、昼のミーティングとあわせて指示を出す」



やまかわさんは入社以来、ラインウェルダー、FCUB、板継ぎを担当し、指導的役割も担うオールマイティーの技能者。「現在はひたすら板継ぎとカスケードに取り組む」



しださんはロンジの取り付けを担当する。「工程にしたがい必要なロンジをクレーンで移動して仮付け溶接する」



同社ではNK(日本海事協会)の溶接資格試験合格が現場配属の必須条件であり、高卒技能職は所内の大島溶接技術高等訓練校で1年間、ガス切断、炭酸ガスアーク溶接、被覆アーク溶接の実技をはじめとする広範な訓練を受ける。最初は「何もかもが初めてで素人にできるのか」「やけどが心配。電流の合わせ方がわからなかった」「やけどなどの跡が残らないか。また、感電しないか」など不安を抱えたものの、経験に応じて溶接に対する印象に変化が生じる。

「毎日続けることで徐々にビードが整うようになり、溶接長も長くなっていく。音で電流、電圧が何となくわかるようになる」(たていしさん

「FCUBを担当して間もないころ、裏ビードの仕上がりに課題を感じていた。先輩のアドバイスを受け、板厚や電流のデータを取るようになり、3年目を迎え、社外の人から裏ビードをほめられたときはすごくうれしかった」(やまかわさん

「溶接に携わっていると、上手にできる日が続く場合もあれば、そうでないときもある。上手にできたと実感するとともに、UTに合格したときは達成感を覚える」(しださん

溶接の音に関しては、たていしさんと同様、やまかわさんも「音によってビード形状が変わる」と指摘する。山川さんは溶接の音が好きで「休みの日になると溶接の音が聞きたくなる」という。


きれいに溶接できたときの達成感

今回の溶接女子3人は、溶接の仕事にやりがいを感じていると話す。

「現場に性別はない。技能が高ければその人に習う。実際、班が一緒だったころ、やまかわに男性技能者をつけて指導させたこともある」(たていしさん

「カスケードで埋めていく過程が好き。すべて埋め終わったときが気持ちいい」
(やまかわさん

しださんは3歳の長女に自らの仕事を「世界中を行ったり来たりする大きな船をつくっている」と説明している。

今後については、「自分の右腕を育てること」(たていしさん)「先輩より後輩が多くなった。後輩に負けないように、また、先輩にも負けないようにがんばる」(やまかわさん)「現在の班に入って間もないので、できる仕事を増やしていきたい。100㌧クレーンやフォークリフトなどいろいろな免許を取得したい」(しださん)とそれぞれ目標を語る。

最後にこれから溶接を始める世代に対するメッセージを聞いた。

「毎日溶接すれば目に見えてビードがきれいになっていくのがわかる。大変だけどやりがいはある」(たていしさん

「初めは怖いかもしれないが、毎日溶接することで慣れるし、だんだん楽しくなってくる」(やまかわさん

「やけどなどの不安はあるものの、始めたら楽しいし、きれいに溶接できたときの達成感は大きい。初めは怖いかもしれないが、怖がらずに挑戦してほしい」(しださん


「休日のリフレッシュは会社の同僚との旅行。3ヵ月に1回程度、1泊2日を企画。2人旅を始めてから8年になる」(たていしさん


「洋服が好きなので休日は買い物か、友達と映画などに出かける」(やまかわさん


「休日は娘とドライブ。車が好きの仲間と集まることも。娘と車が中心」(しださん