熊本県立八代工業高校

九州地区高校生溶接技術競技会に出場

いまむらさん
さいかさん
いわたさん
つちださん

2018年11月4日、長崎県高等技術専門校(長崎県長与町)で行われた九州地区高校生溶接技術競技会(主催:日本溶接協会九州地区溶接技術検定委員会・長崎県溶接協会)に、熊本県立八代工業高校のいまむらさん、いわたさん、さいかさん、つちださんの4人の女子生徒が選手として出場した。

「溶接を知ってから、身の回りのあちこちにある溶接が気になるようになった。自分自身も溶接することで『ものづくり』につながっていることを実感できるのが魅力」というさいかさん

いわたさんも「溶接はものづくりに欠かせない技術。練習すれば仕上がりの見栄えが明らかに変わってくるのも楽しい」

溶接はきつくないかと聞くと「やけどしたりする危険もあるけど、練習を繰り返しているうちに『当たり前だよね』って感じになった」と笑う。楽しんで溶接をしている気持ちが、伝わってくる。それでも競技中の表情は真剣そのもの。

「緊張で練習通りにいかなかった。溶接棒を持つ手が震えてしまった」といわたさんは話すが、開先加工から溶接、清掃までスムーズな手付きでこなした。

溶接に臨む



いまむらさん(3年) 「組み立てるより分解するのが好き。小さい頃からものづくりに興味があった」といういまむらさんは、溶接だけでなく旋盤も大好きで切削工具マニアを自認するほど。機械製作部で部長を務めるかたわら、軽音楽部にも所属しギターを担当する。「大学でも勉強して、将来は溶接材料や切削工具の研究開発をしたい」

いわたさん(3年) 卓球部に所属するいわたさん。「戦国時代、特にお城にハマっている。石垣の技術はすごいと思う。大阪城に行ってみたい」と目を輝かす。JIS専門級の取得を目指して先生からも「溶接大好き」と評される。「夢は地元の工場長」

さいかさん(3年) 野球部マネージャーのさいかさんは、食品メーカーへの就職が決まっている。普段からお菓子作りなどに興味があったという。「将来、お金を貯めてマイ溶接機を買いたい」

つちださん(2年) バドミントン部に所属するつちださんは、今回が競技会初参加。先輩から可愛がられる存在だ。実習で溶接に興味を持ち、先生から競技会への出場を勧められて本格的に取り組むようになった。「練習するごとに上達を感じられるのがうれしい。来年も九州地区競技会に出場したい」

(左から)つちださん、いまむらさん、いわたさん、さいかさん



八代工業高校は九州地区高校生競技会の予選である熊本県競技会で、個人の部の準優勝、優秀賞、優良賞を獲得したうえ、団体優勝も達成。4人の地区競技会出場を勝ち取った。同校の女子選手が活躍する原動力は何か。

「溶接前に、上手く行ったときのイメージを思い浮かべてから取り組む」といういまむらさん。ほかにも「長時間練習すると腕が疲れるので、なるべく短時間に集中して練習するようにしている」(さいかさん)、「良いところも悪いところも、こまめにメモを取るようにしている」(いわたさん)、「練習1セットごとに先生にアドバイスしてもらっている」(つちださん)と、それぞれに工夫がある。

先生から「競技会に出場しないか」と声を掛けられたのが4人が溶接をはじめたきっかけ。溶接を学ぶ高校生は、多くの学校で男子が大部分を占める。八代工業高校では溶接を学ぶ生徒7人のうち6人が女子生徒だ。性別にかかわらず生徒の興味を捉える、先生の指導力が光る。

熊本県内の高校生の指導に協力する、九州溶接マイスターの坂口敏之さんは「溶接に取り組む女子は確かに珍しいが、取り組む姿勢が前向きで素晴らしい。この先どんな仕事をするかは分からないが、競技会に参加した経験を生かしてほしい」と目を細める。

生徒自身の溶接を楽しむ気持ちと向上心、そしてそれを引き出し育てる先生や指導者たちの存在が「溶接女子」活躍の原動力と言えそうだ。