今年、入社2年目を迎えたよざさんは、溶接材料メーカー・ニツコー熔材工業にとって初めての女性営業職。現在は、主要大手商社をはじめ、京滋・東大阪地区の販売店などを担当する。ぎこちなかった客先でのトークも慣れ、笑顔を絶やさない持ち前の明るいキャラクターは、客先からも可愛がられている。最近では「上司や先輩ではなく、私宛に電話をいただけるようになったのが嬉しい」と、営業としての自覚と責任、そして充実感が彼女の原動力になっているようだ。

もともと「人と話すのが好き」というよざさん。大学時代は森林生態学を専攻していたリケジョ(理系女子)だが、就職活動では、人と接する機会の多い営業職を志望。合同就職説明会でニツコー熔材工業に興味を持ち、「当社初の営業レディとして是非、活躍してほしい」という言葉が決め手となった。溶接という未知の領域に不安はあったが、迷いはなかった。学生時代の心残りと言えば、やはりコロナの影響で卒業式も謝恩会もなかったこと。だから、卒業式で着る予定だったはかま姿をフォトに収め、思い出とした。

はかま姿のよざさん

同社の場合、通常、新入社員は交野工場で1週間程度の研修を受けるが、緊急事態宣言が発せられていた昨年は様相が異なり、入社から2ヶ月間、じっくりと現場で研修に費やしてもらうことができた。溶接材料の基礎知識や製造工程などの座学だけでなく、時には先輩らに交じり製造ラインに入ったこともある。もちろん手溶接や半自動アーク溶接も経験した。

「(SUSやFeなど)鋼種がこんなに多いとは思わなかったし、最初怖かった溶接も慣れてくるとどんどん面白くなっていった」と。実習の締め括りにはSUS製ペン立て製作にも挑戦。デスクに置かれているその力作は、今もよざさんの奮闘を見守っている。

実習で製作したSUS製ペン立て

営業として初めての外回りは、先輩に伴われ訪れた大手商社。各部署を回り、担当者らと挨拶していくうちに、あっという間に名刺が残り僅かに。気が気ではなかった。新人営業マン誰もが経験する「あるある話」のひとつだ。また「人前で話すことは、自分自身の勉強になる」とニツコー熔材工業では、新人が商社向け講習会で講師を務めるという伝統があり、よざさんも営業に配属されて2ヶ月後の8月に演台に立った。話すことは苦手ではないが、さすがにデビュー前夜は母親を相手に何度も練習したそうで、その甲斐あって約1時間半の大役を無事終えた。「研修で気付かなかったことも人前で話すことで覚えることができた」という。

10月からは担当を持ち1人で回るようになった。まだまだ戸惑うことも多いが、「それもまた楽しい」とあくまでも前向き。「お客様も優しく、まだ怒られたことはない」というよざさんに、上司は「それだけ、まだお役に立っていないし、重要視されていないのだ」とも。一見、辛口コメントだが、その言葉の中には彼女への期待が込められている。

今年4月からは後輩もできた。「先輩になるのは不安。もう少し新人でいられると思っていたので、後輩に負けないよう、もっと勉強しなければ…。今はまだお客様に言われたことをこなすだけで精いっぱいなので、早く提案営業ができるようになりたい」と、努力家の一面ものぞかせる。友人たちから「リリちゃん」と呼ばれるよざさん。「ニツコーのリリちゃん」と呼ばれる日も近そうだ。