株式会社IHI

"経験を 重ねた分だけ
成長実感"

なかじまさん(2017年入社)

進路は溶接か、旋盤か

神奈川県溶接協会は9年間にわたり高校生溶接コンクールを実施しているが、同コンクールを経験した選手が地元の溶接事業所に就職するケースもみられるようになってきた。第7回コンクールで優勝し、県を代表して臨んだ関東甲信越高校生溶接コンクールでも優秀賞を獲得した、なかじまさんはIHI横浜工場(横浜市磯子区)で溶接トーチを握る。

なかじまさんが工業高校に入学した当初は、溶接よりも旋盤に魅力を感じていた。溶接は1年生のときに経験していたが、本気で取り組むきっかけになったのは2年生のときに参加した神奈川県高校生溶接コンクールだった。教師の薦めで出場することになったが、同じく出場を決めた同級生は部活動でも溶接を経験していたため、技能に大きな差があった。

「出場するからには優勝を目指したい」

なかじまさんは決意を固め、放課後だけでなく、朝6時に登校して朝練するなど、ひたむきに練習に励んだ。その成果もあって県コンクールでは見事優勝の栄誉を手にした。ただ、自信を持って臨んだ関東甲信越コンクールでは「練習通りできた」にも関わらず優秀賞に止まった。自分より上手い選手が大勢いることに大きな衝撃を受けたという。

溶接だけでなく、旋盤でも高校生競技会で優勝しているなかじまさんは、進路を溶接にするか、旋盤にするか悩んだ時期もあった。決め手になったのは、インターンシップ制度を利用して3年生のときにIHI横浜工場に体験入社したこと。学校の授業ではガス溶接と被覆アーク溶接しか学ばないが、半自動やティグなど、溶接には様々な種類があり奥の深さを知ったという。

「溶接は一つひとつ技能を身につけていく面白さがあると思った」

また、なかじまさんが同工場を訪ねたときは、ちょうどシールド掘削機の製造に当たっており、「チームを組んで大型構造物を作る」ことにも興味を持った。


神奈川県コンクールで入賞



そして希望通り2017年4月、IHI横浜工場に入社。1年間の研修に臨んだが早速、学校の授業で学んだ溶接と、仕事で使う溶接の違いを知った。

「学校ではコンクールに出場したこともあり、被覆アーク溶接を中心に学んだ。ところが職場では、半自動溶接やティグ溶接を使うことが多く、被覆アーク溶接はほとんど使わないことを知った。溶接姿勢も学校では下向だけだったが、仕事では横向や立向も必要になる。そして、何よりも裏波溶接に苦労した」

ただ、もともと溶接が好きで入社したなかじまさん。こうした違いや難しさは、むしろ「やり甲斐」に繋がったそうだ。同期の新入社員は男性ばかりで筋力の違いも感じたが、毎日筋トレに励むことで「同じように仕事ができるようにしている」

こうした努力が実り、今年2月に開かれた神奈川県溶接技術コンクールでは、工場を代表して出場することになった。IHI横浜工場では代表選手の選考に当たり新入社員枠を設けているが、提出された新入社員の競技材をみて審査員全員一致でなかじまさんを選んだそうだ。そして、入社してまだ1年に満たないにも関わらず、同コンクールで6位入賞(優良賞)という大きな成果をあげている。


技能五輪全国大会が新たな目標に



1年間の研修を終えたなかじまさんは、配属先で配管の溶接に取り組むはずだったが、その前にやるべきことができた。技能五輪全国大会への挑戦である。

「技能五輪神奈川県代表を決める予選に出場するための練習を4月から始めた。アルミの溶接など新たに覚えなければならないことも多いが、好きで始めたことなので毎日が充実している。むしろ、もっと色々な溶接を経験したいので、これから配属先に行くのも楽しみ」

「好きこそものの上手なれ」というが、好きが高じて「夢の中でも溶接している」というなかじまさん。その魅力について「溶接は努力を裏切らない。練習した分だけ、経験を重ねた分だけ、成長している自分を実感できる」と話す。