株式会社日立パワーソリューションズ

"将来は 父と一緒に
溶接を"

のぶたさん(2016年入社)

水力発電所向け各種機器の補修溶接に従事

「溶接に関して『のぶたに任せておけば大丈夫』と言われるような仕事をしたい」とは、株式会社日立パワーソリューションズ(茨城県日立市)に在籍する、のぶたさん

2016年4月に入社し、火力発電プラントなどで使用する給水加熱器のタービン製造業務に携わり、溶接技能者としての第一歩を踏み出した。

給水加熱器は火力発電プラントにおいて、蒸気タービンからの抽気を用いて、ボイラなどへの給水を加熱し、タービンプラントの熱効率の向上を図る重要な役割を果たす。のぶたさんは当時、加熱管や仕切板、各種弁など複雑な形状で構成されている給水加熱器のメンテナンスに携わっていた。

主に半自動溶接を中心に軟鋼を使用する補器製品や気密性が要求される部位の補修などにはティグ溶接で丁寧に仕上げる。16年11月からは現在在籍する機電製造部電力工事・サービスグループに異動。主な業務は、水力発電で利用される羽根車(ランナ)や水量を調整する案内羽根(ガイドベーン)などの補修溶接がメインとなる。

水力発電では、水中に含まれる土砂によりランナやガイドベーンなどの部品が経年摩耗するため定期的に肉盛溶接による補修を施し原形復旧させている。補修部位の材質や形状によりアーク溶接やティグ溶接を駆使しながら作業を進めていく。


技能五輪全国大会に感銘



のぶたさんが溶接の道へ進んだきっかけは、父の影響が大きい。

タービンの構造溶接の技能者である父は、長野県で開催された第50回技能五輪全国大会に当時中学3年生だったのぶたさんを連れ出した。

数ある競技種目のうち、どんな仕事であれ、ものづくりの現場を見て何かを感じてほしいとの思いからだった。自動車鈑金や塗装、情報処理、料理に至るまで様々な技能で日本一を競う若者の中でものぶたさんが一番感銘を受けた種目は「電気溶接」だった。

「出場選手の溶接を行う熱心な姿や最後まであきらめない姿勢は見ている側にも伝わってきた。この製品で優勝するという気迫が各選手にみなぎっていた」と当時を語る。

その後、のぶたさんもその熱い思いを胸に父と同じ日立工業専修学校に進み、溶接の基礎を学んだ。初めて溶接棒を握った日のことをのぶたさんは「鉄を溶かしている感覚がとても新鮮で楽しかった。それでもアークを出す前は毎回、どうなるか予想もつかなくてとても怖かった」と思い返すが、今では立派な「溶接女子」だ。


前後工程まで完璧な技能者を目標に



理想の溶接について尋ねると「溶接だけに携わるのではなく、段取りから溶接後のグラインダを用いた仕上げ、検査といった前後工程まで完璧にこなせる技能者になりたい」という。「先輩のビードと比べるとまだまだ技の引き出しが少ない面を感じる。さらにレベルアップを図っていきたい」と常に向上心は忘れない。

今後は、工場での補修作業だけでなく実際に現地へ赴いての出張溶接も多く経験したいという。工場へ持ち込めない規模の大きい構造物は、現地に出張しての作業が中心だ。スケールの大きな仕事に惹かれる彼女だが、まだまだ女性の就労環境が未整備の地区も多く難しい一面もある。

「女性だからといって特に大変と思ったことはない」。やけどやけがなどには安全第一を実践している。のぶたさんの厳しい環境に身を置きながらも高い技能を身につけていきたいという熱意には上司や同僚らも一目を置く。

「将来は、父と一緒に溶接の仕事をしてみたい。父は仕事に関しては厳しい部分もあるが、溶接の分からないことを徹底的に教えてくれる尊敬できる先輩」と語る。のぶた親子が同じ現場で仕事に取り組む姿を見る日もそう遠くないかもしれない。