「2018年秋から仮付、冬からは本溶接に携わるようになった。最初は溶接欠陥が発生しないようにと一生懸命で、それを乗り越えると次はひずみの発生を少なくすることを目標に掲げた」と話すのは醸造機械メーカー、フジワラテクノアート(岡山市北区)のとよたさん。周囲の温かいまなざしに見守られ、技能向上に向け一歩一歩前進するなか、「将来は仕事を任せても安心と言ってもらえるようになれたらうれしい」と抱負を語る。

同社は1933年創業。醸造機械をはじめ食品機械・バイオ関連機器の開発・設計・製造・据付・販売およびプラントエンジニアリングを展開する。醤油、味噌、清酒、焼酎などの醸造分野で、麹づくりの全自動無人化への道を切り開き、国内の製麹分野で約80%のシェアを占める。

製造中の回転式自動製麹培養装置の前で

2018年4月に入社したとよたさんは現在、製造部製造グループ溶接加工チームに在籍する。回転円盤式温風冷風乾燥機や回転式自動製麹培養装置の製造過程で被覆アーク・半自動・ティグ溶接を担当する。材料のステンレス鋼は主に板厚2~19mmを用いる。

「主に4~5人のチームで作業に当たる。『円盤』と呼ぶ製麹の床になる部材は、大きいものは直径が20mにも及び、フラックス入りワイヤを使用した半自動溶接とティグ溶接を適用する。円盤は高い精度の平面度が要求され、製造工程では仮組み、解体を数回経ることになるため、その都度ひずみに対して細心の注意が求められる」

溶接加工チームの従業員は20代7人、30代・40代各1人で構成する。「年齢も近く相談しやすい環境が整っている。疑問に対して先輩からは、忙しいときでも手本を示した後、溶接速度やトーチ角度などに関してアドバイスをいただいている」

「溶接に関する目標にゴールはない」と話すとよたさん

母は介護士、叔母は看護師、2歳上の姉は助産師という家系で高校進学に当たっては周囲の反対を受けた。「車いすに乗ることを嫌った祖母の姿を見て『私が作ってあげる』と工業高校を志望した。これが初めてのわがままだった。高校の実習では溶接が全然できなくて。それでも一生懸命やって、できたときうれしくて、溶接の仕事に就きたいという気持ちが芽生えた。1年の文化祭では機械科で所々溶接を用いて『もぐらたたき機』を製作したことが思い出の一つ。最終的に車椅子は作れなかったものの、縁あって野球部のボールネットのフレームやハンドボール部のゴールのフレームなどの補修溶接にも携わることができた」

高校2年の進路相談でものづくりの現場を希望する意志を明確に示した。「母は私が不器用なことを知っているので、高校卒業後は工業をあきらめて事務関係に進むと思っていたようだ。現場の溶接職種が希望と伝えると大反対されたが、自分の人生と心に決め、安全に働くことを約束して納得してもらった」

自身がそうだったように、溶接を知らない若い世代には「体験しないことには分からない。一度体験することで溶接の魅力を感じてもらえると思う。経験を重ねるごとにやりがいを感じると同時に自分のためにもなると思う」と勧める。

同社の会社紹介動画のナレーションには「私たちが醸す夢に終わりはない」という一節がある。とよたさんは「ひずみ対策の次は、もっと効率よく溶接ができるようになることで、他の作業に時間を回せないか。溶接に関する目標にゴールはない」と話す。

実家が営む飲食店で